WORK&CREATION
【WORK&CREATION】群馬のシープドッグや埴輪が教えてくれた、人事の仕事に大切な「言葉にならないものを受け取る」ということ
artLargeには、「WORK&CREATION (以下、ワークリ)」という制度があります。
毎月2名の社員が、旅先で仕事ができる制度です。
こんにちは、artLargeで人事をしている坂井さとみです。
今回のワークリでは、どうしても叶えたいことが一つあり、それは「生き物に触れること」でした。
私の実家は、犬をはじめ。亀、メダカ、金魚、ハムスターと生き物がたくさんいました。
子どもの頃は、それが特別なことだとは思っていませんでした。家に帰れば犬がいて、何気なく触れたり、眺めたりする。生き物と過ごす時間は、自然と気持ちをゆるめてくれるものだったのだと思います。
ところが東京に出てきてからは、生き物と触れ合う機会がほとんどなくなりました。
人事の仕事では、日々さまざまな人と向き合い、相手の気持ちを考えながら動きます。やりがいを感じる一方で、知らないうちに少し気を張っていたのかもしれません。
そんなとき、散歩中の犬や道端の猫を見かけると、ふっと気持ちがゆるむ自分がいました。本当は撫でたいのに声をかけられず、近づきたい気持ちをぐっと我慢する日々。気づけば、「生き物に触れて癒されたい」という想いが、じわじわと溜まっていました(笑)。
だから今回の旅のtodoには、真っ先に「生き物に触れること」を入れました。
ただ、それだけなら普段の旅行でもできます。
ワークリとして旅に出るからには、「生き物に触れたい」というこの衝動が仕事にどうつながっているのかまで、確かめてみたいと思ったのです。
群馬を選んだ、もうひとつの理由
今回のワークリの目的地に選んだのは、群馬県。
動物と触れ合える牧場があることが、決め手のひとつでしたが、もうひとつ理由がありました。

実は私、美術大学の工芸科で漆芸を学んでいました。
そして今回、一緒に旅をしたのが、当時の同期で群馬県出身の友人です。
彼女も漆芸を学び、現在は漆芸作家として活動する一方で、テレビ局向けのイラスト制作なども手がけています。
そんな彼女の地元であることも、今回、群馬を旅先に選んだ理由のひとつでした。
さらに声をかけると、同期がもう2人集まってくれました。
ひとりは、国内の玩具メーカーでおもちゃをつくっています。
もうひとりは陶芸学科出身で、陶芸作家として作品を売るだけでなく、陶芸を使った絵本も出版しています。
卒業後はそれぞれ別の道を歩んでいますが、今も会えば、ものづくりを通して育まれた感性や価値観が自然と重なります。
・生き物に触れること。
・ものづくりを続ける友人たちと、もう一度共に時間を過ごすこと
この二つが、今回の旅の出発点になりました。

旅先での仕事が時間の使い方を変える
仲間と合流したのは2日目から。初日の金曜は、一人で仕事をしました。
ワークリは、あくまで「旅先で仕事をする」制度。
高崎のコワーキングスペース「HACO」に入り、まずはいつものようにメールやチャットの返信からのスタートです。

その他にも、各種申請や問い合わせ対応、校正担当のシフト調整、健康診断や他社の福利厚生のリサーチなど。この日は、長時間腰を据えて取り組む仕事よりも、旅先で場所を変えながら進めやすい業務を中心に行いました。
午前中はコワーキングスペース、午後はホテルへ移動して作業。
いつものデスクだと、仕事の終わりを自分で決められるぶん、つい時間をかけすぎてしまうことがあります。
一方、旅先では「この時間までに終わらせる」「ここまで進めたら次の場所へ移動する」と、自然に区切りが生まれます。
「よし、ここでMAX集中!」とメリハリをつけて、グッと集中できるこの感じが、自分にはとても心地よかったです。
旅を終えてオフィスに戻った今も、
集中できなくなったら休む、のではなく、区切りを自分で設けるようにしています。リフレッシュを限界が来る前にあえて挟むことで、違った視点から考えることなどが容易になりました。
オフィスでは旅先のように景色が大きく変わるわけではありませんが(笑)、ときどき窓の外の空模様を見たり、植物の成長を眺めたりするようになりました。

そんな小さな切り替えが、次の集中をつくってくれています。
埴輪の前で、4人がそろって本気になる ― かみつけの里
翌日、合流した仲間とまず向かったのは「かみつけの里博物館」でした。陶芸学科出身の友人が選んでくれた場所です。

私は知らなかったのですが、群馬にはたくさんの古墳があり、数多くの埴輪が発掘されているのだそうです。
館内には「HANI-1グランプリ」という、来館者が埴輪をスケッチするコーナーがありました。
せっかくだからとみんなで挑戦してみることに。
最初は軽い気持ちだったはずなのですが、そこは美大出身者の集まりです。
気づけば20分ほど、黙々と鉛筆を動かしていました。

埴輪は、ただ眺めているだけでは素朴な形に見えます。
けれど、描くためにじっくり観察していると、つくった人の「手癖」がそのまま残っているんです。
「ここ、ヘラでこう動かしたよね」「わかる、この手の動きだよね」
埴輪を覗き込みながら、そんな会話が自然と生まれました。
なかでも印象に残ったのが、鳥の埴輪。形は少し緩くて、決して整いすぎてはいない。でも、そのバランスが絶妙にかわいい。
「このくらいがちょうどいい」とどこかで手を止めた感覚が、なんだか今の私たちと似ていて、「これ、あえてこうしたんじゃない?」と、千年以上も前の、顔も知らないつくり手に、思わず問いかけている自分がいました。
言葉を交わせなくても、残された形や手の跡から、その人の判断や感覚を想像することはできる。
埴輪を見ていたはずが、いつの間にか、埴輪の向こう側にいる人を見ようとしていました。

のんびりした羊と、お仕事モードのシープドッグ ― 伊香保グリーン牧場

「続いて向かったのは、今回の旅のメインでもある「伊香保グリーン牧場」。
ヤギや羊と触れ合い、減っていた私の「生き物メーター」は、ここで一気に満たされました。


のんびり生きている動物たちを見ていると、「細かいことは、ちょっと横に置いておこうかな」と、自然と気持ちがほぐれていきます。
ただ、自分でも驚いたことに、この旅でいちばん心を動かされたのは、
その”のんびり”とは正反対の光景でした。
シープドッグによる、羊追いの実演です。
シープドッグの仕事は、羊の群れをまとめ、決められた場所へ誘導すること。
登場した瞬間から、目つきも、姿勢も、身のこなしも、それまで見てきた犬とはまるで違いました。完全に”お仕事モード”なんです。

特に見入ってしまったのは、犬と牧夫さんの間のやりとりでした。
掛け声や口笛、ほんのわずかな合図だけで、犬がパッと動く。
言葉で細かく指示しているわけではないのに、ふたりの息はぴったり合っている。
さらに犬は、羊の動きや群れの空気を読みながら、自分の立ち位置や走る方向を変えていきます。
人と犬、犬と羊。
言葉の通じない相手同士が、それぞれの動きや気配を読み取りながら、一つの仕事を成し遂げている。その光景に、私はぐっと心を掴まれてしまいました。

岩のなかの神社で、彫刻の「遊び心」を探す ― 榛名神社
最終日に訪れたのは、榛名神社。群馬最強のパワースポットとも言われる場所です。
巨大な岩に囲まれた境内は、本当に神秘的でした。
ちょうど社殿の修復が終わったタイミングで、鮮やかな彫刻をきれいな状態で見られたのも、ラッキーでした。

美術をやっていたぶん、私はつい、彫刻のひとつひとつに見入ってしまいます。屋根を支える鬼のような像。意外とキュートな狛犬。彫刻の表面に残された、職人の手の動き。
一つひとつ眺めながら、「どんな人が彫ったんだろう」「この表情は、少しふざけてつくったのかな」と、制作していた人の姿を想像していました。
気づけばここでも、会ったことのないつくり手と、作品を通して少しだけ「わかり合えた」ような気持ちになっていました。
旅を終えて ― わかり合う、ということ
埴輪、羊や犬、神社の彫刻。
振り返ってみると、私は旅のあいだ、ずっと同じことをしていました。
目の前にある動きや形を観察し、その向こう側にある気持ちや意図を想像すること。
言葉を交わしていなくても、「少しわかった」「何かが通じた」と思える瞬間を探していたのだと思います。
旅に出る前は、「生き物に触れること」が、なぜ仕事につながると思うのか、うまく説明できませんでした。
けれど、群馬での三日間を終えた今なら、言葉にできる気がします。
私が求めていたのは、生き物に触れたいということだけでなく、
言葉になっていないものを受け取り、相手を理解しようとする時間だったのだと思います。
思えば、美大で学んだことも、地続きでした。
アートは、共感されなければ評価されない世界。
自分が“いい”と思うものを、相手にも“そう”感じてもらえるのか。
つくる側にいた頃の私は、いつもそれを考えていました。
人事になった今は、少し立場が変わりました。
目の前の人が、何を大切にしているのか。
何に困り、どんなことを言葉にできずにいるのか。
今度は、私が受け取る側です。
言葉が通じる相手だからといって、「こう言っていたから、そう思っているんだろう」と思い込まず、その奥にあるものまで想像できる人でありたい。
それが、人事として私が大切にしたい姿勢なのだと、この旅で確かめることができました。

旅初心者の私にとっての、ワークリの魅力
最後に、
私はもともと、あまり旅行をするタイプではありませんでした。
休日は実家に帰るか、都内のカフェへ出かけたら一日が終わる、という過ごし方がほとんどでした。
そんな私が今回ワークリに出てみて驚いたのは、群馬まで新幹線を使えば1時間ほどで行けるということ。「意外と気軽に行けるんだ」と、少し拍子抜けしたくらいです。
だからこそ今回、「時間をかけて遠くへ行くことだけが旅ではない」と知れたことは、私にとって大きな発見でした。
これからは気軽に、軽めの旅から少しずつ。「いつかは海外にも、行けるうちに行こう」と思えるようになっただけでも、大きな一歩でした。
もうひとつの発見は、旅をする「季節」です。
旅行といえば夏か冬ばかりだった私が、初夏に出かけたのは、今回が初めてでした。ワークリは基本的には立候補制ですが、ときどき「この時期に行ってみませんか」と声をかけてもらうこともあります。
そのおかげで、行楽客がまだ少ない5月の群馬で、新緑を存分に満喫できました。
自分では選ばない季節だからこそ、出会える景色がある。
それもまた、ワークリならではの魅力だと思います。

そして、この旅を終えて生まれた、一番大きな変化。
私はまた、絵を描きたくなりました。
今は制作からは離れていますが、同期たちと過ごし、埴輪をスケッチし、職人の彫刻を眺めているうちに、久しぶりに自分の手を動かしたいという気持ちが湧いてきました。
「つくりたい」が、自分のなかにまだちゃんと残っている。そんなことにも気づかされた旅でした。
今回紹介したスポット
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▼感性を更新する、「WORK&CREATION(ワークリ)」に込めた想い


